- "俺たちは誰にも跪かない。"
- ―マンス・レイダー
自由民という呼称は、ウェスタロス大陸の一部だが七王国の北の国境の向こう、壁の向こうに住む人々が自分たちのことを指して使う。この呼び方は、彼らの社会で彼ら自身が従うと決めたリーダーの他には、世襲による政治権力を認めないということも表している。七王国の人々は、自由民のことを軽蔑して野人と呼ぶ。
通常、野人は多くの敵対する部族に分かれているが、マンス・レイダーの元で彼らが団結したように、時たま”壁の向こうの王”と呼ばれる一人の統率者の元に集結する。自由民の多くは、ジョン・スノウに救われたのち、現在ではスターク家と同盟を組んでいる。
「野人」という言葉は、アリン家に従わない谷間の山岳部族を指して使われることもあるが、その文脈外では通常壁の向こうの人々を指す。
歴史[]
- "ここはあなたの土地じゃない!私たちはずっとここにいた!あなたはたまたまここに来て、巨大な壁を建て、自分のものだと言ったんだ!"
- ―イグリット
歴史の中で、自由民は定期的に壁の向こうの王の元で団結した。
自由民は、北部に住んでいた最初の人々の子孫である。彼らはもともとは、8000年前に壁が建設された時、不幸にも壁の北側に住んでいた。このことが民族の遺産として語り継がれてきた上、彼らの共通の血筋によって野人と北部人の文化には多くの類似点がある。野人は生活様式や習慣において北部人よりも数千年前の最初の人々に近い。一方で北部は6000年前に南ウェスタロスに侵攻してきたアンダル人の隣国の影響を受け、特に300年前の”ターガリエン征服”によって七王国が一つの王国に統一されてからはその影響を受けた。
いくつもの時代が過ぎ、南にいる七王国の人々の大部分は、そもそもなぜ壁が建設されたのか忘れ、彼らが原始的な野蛮人だと呼んでいた野人から王国を守るためにあるのだと信じるようになっていた。しかし、冥夜の守人<ナイツ・ウォッチ>は、本来は、ほとんど神話となっていたホワイト・ウォーカーが戻ってくる可能性に備えて壁が建設されたのだと覚えていた。ホワイト・ウォーカーは過去8000年に渡って現れていなかったので、ナイツ・ウォッチは主に野人が壁を超えて南に来るのを防いだり、野人の行動を掴むために荒地に見張りを送ったりすることに集中するようになっていた。これによってまた、ナイツ・ウォッチの名誉ある絆はなくなり、主に追放された犯罪者の行き着く先となっていた。
文化[]
風哭きの峠道での自由民の野営
自由民は多様な気難しい部族や村人らが集まっており、いくらか上品な者もいたが、他は野蛮で敵対し合っていた。異なる派閥は、異なる文化や習慣を持っていて、また言葉も違うこともあった。彼らはほとんどの時を些細なことでお互い戦って過ごしていたが、マンス・レイダーのような壁の向こうの王の元に統一された時だけは別だった。
自由民は、遠いいとこの北部人のように森の古い神を信仰している。スターク家の領土内でさえ、七神正教を信仰する者がいて、それはたいてい政略結婚によって北部にやってきた南部の貴族の女性だった。しかし壁の向こうでは古い神だけが信仰されている。
女性も、男性と一緒に壁の南の襲撃に加わる。こうした女戦士たちはスピアワイフとして知られる。
自由民と七王国領土での社会の主要な相違点は、自由民は彼らの社会制度の中に世襲の貴族階級を持たない点だ。彼らは、自分たちの「自由な」身分に誇りを持っていて、自分たちを率いると選んだ統率者にしか従わない。ある時には「壁の向こうの王」の元に団結するが、その称号と地位は世襲せず、自由民は誰かの父親がそうだったからといって従ったりはしない。戦いでは壁の向こうの王に従うが、王を自分の主人として跪くような、服従の儀式はしない。彼らは七王国の国民を「跪く者」と呼ぶ。自分たちで統治するように選んだのではない者に、物理的に跪くからだ。自由民の間には、上流貴族と下流の庶民に社会階層の違いはない。
一方別の面としては、中心となる権力がなく、自由民たちはあまりに「自由」なので彼らに制定された強制の法律はない。一人が持てるものを持ち、守れるものを持ち続ける。これは七王国の社会よりもいくらか冷酷で無秩序だが、ある面では彼らの社会は政治的に平等とも言える。
野人は、死体を埋めずに焼く。これは宗教とは関係がない。ただ単に、ホワイト・ウォーカーが死者を亡者として蘇らせないようにしているのだ。炎が使えない時は、最低でも死体の首や手足を切断し、強力な亡者とならないようにする。
部族[]
五王の戦いの際に、自由民は約90の部族に分かれ、そのうちのいくつかは長きにわたり憎しみ合う敵だった。普段は政治的に分かれているが、壁の向こうの王マンス・レイダーの元で、ホワイト・ウォーカーがやってくる次の冬が来る前に壁の南にたどり着くという共通の目的を持ち団結した。マンスが死んだ後、来たるホワイト・ウォーカーと亡者の軍との戦争で同盟を組むように残りの自由民を説得するため、トアマンドとジョン・スノウはナイツ・ウォッチと自由民の他の仲間を連れて堅牢な家へ向かった。
自由民のいくつかの部族は社会的に、また文化的に大きく異なる。多くの者は壁の南のアンダル人が使う共通語を理解できるが、マンスによると彼の軍にいる部族は7つの異なる言語を話す(共通語を含む。他には最初に人々の古語や、その派生語を話す)。