- "イ・ティとアッシャイの驚異は我々の市場を通り過ぎた。"
- ―ザロ・ゾアン・ダクソス
イ・ティはエッソスの極東にある地域である。それは既知の世界の東限、クァースのさらに東に位置している。時にウェスタロスから限りなく離れた場所としてアッシャイと並べて語られる[1]。クァースが翡翠海の西端にある狭い海峡にあるのに対し、イ・ティは翡翠海の北西部の海岸にある。商人は貿易を行うために定期的にイ・ティとアッシャイから船でクァースを訪れている。
イ・ティの人やものは「イ・ティッシュ」と称されている。
文化[]
イ・ティは歴史が古く、洗練された文明を持っている。
ここの宗教は複数の神を拝するが、主に二つの始祖神を崇めている。光の乙女と夜の獅子である。
撮影裏話[]
イ・ティは現実の中国と極東の歴史からヒントを得ている。Westeros.orgを運営し、ジョージ・R・R・マーティンと資料本『氷と炎の世界』を共著しているエリオ・ガルシアとリンダ・アントンソンの二人がこのことを明らかにしている。リンダによれば「ウェスタロスやエッソスの回で東アジア人の風貌を持つ者が出てきたらそれはイ・ティの話だ。」エリオによればイ・ティは「まさに中国王朝からヒントを得たものだ」という。特に神格化された皇帝による支配を描いた所がそうだ。
マーティン自身はまた彼のブログで、イ・ティとその周囲の国々は、彼が極東をイメージして描いた世界であると記している。さらになぜ物語には東アジア人が重要な人物として描かれていないのかという疑問に直接答えている。「まあ、ウェスタロスはブリテン諸島をイメージした世界のファンタジーだから、アジアをイメージした世界からはかなり離れているんだ。イングランドのヨークシャー地方にもあまり多くのアジア人はいないしね。そんな場所は存在しないと言っているわけではないんだけれど。『氷と炎の世界』が発売されたらきっと読みたくなるよ。「他の場所」のセクションにはイ・ティにまつわる題材が沢山出てきて、レン島やジョゴス・ナイ平原とか、面白いと思うんじゃないかな。」
原作では[]
地理[]
地理 小説『氷と炎の歌』ではイ・ティは、アッシャイ、バヤサバード、カヤカヤナヤ、シャミイリアナと共に神秘的な東の伝説の地として描かれている。ウェスタロスの人々にとって既知の世界の遥か東のはずれにあるが、翡翠海を回る船による長距離の貿易は行っている(直接ではないにしろ)。
この国の気候は熱帯性で広大な熱帯雨林が内陸部にあって国土のほとんど大半に広がっている。しかしながら、何世紀にもわたる人類の文明により、この緑豊かな雨林は切り開かれ、広大な緑の農地に姿を変えつつある(その気候と農業の方式は中国南部のそれとやや似ている)。
ウェスタロスには遥かイ・ティまで旅をした者はほとんどいないが、一握りの冒険者がはるばるこの地まで旅している。その中でも有名な案内人がコーリス・ヴェラリオン公、レニーラ・ターガリエンの義父であだ名は「ウミヘビ」である。彼は五王の戦いの二百年近く前にイ・ティへの航海に出かけ、稀少で貴重な香辛料を持ち帰ったのでヴェラリオン家は一時ウェスタロスで最も裕福な家の一つとなった。名高い探検家のロマス・ロングストライダーもまたイ・ティへと旅をした。ウェスタロスにはイ・ティへ旅をした者はほとんどおらず、実際に存在する土地であることは知られているが、ほとんどの人々はその地については何も知らないに等しく、ウェスタロスに住む人々にとってはいまだに半分伝説の地となっている(クァースよりも馴染みがないが、恐るべきアッシャイほどではない)。学者ですら、その歴史と文化については基本的な概要を知るのみである。その理由の一つは、イ・ティの学者たちが、何千年もの時を経た繊細な歴史的古文書を珍重しており、よそ者とは共有したくないからだ。
『氷と炎の大地』を見ると、イ・ティが広大な国家であり、翡翠海の北海岸付近にまで延びていることが確認できる。西の境界線はクァースの東わずか数百マイル、エッソスの南海岸から北海岸に走る広大な骨の庭の反対側にある。東の境界線は、アッシャイから北西に走る山の多い半島である影の土地に隣接している。イ・ティの北の境はジョゴス・ナイの平野にあり、平野ははるか北にある凍える海まで広がっている。ジョゴス・ナイ人はムーンシンガーの宗教を信仰する遊牧民である。イ・ティとその向こうの土地まで東に進む船は翡翠門を通過しなければならない。この門はまたの名をクァースの海峡というが、近くにあるこの都市によって管理されていることによる。クァースは、艦隊を使ってこの海峡を東西に通過する船から通行料を取り立てることによって巨万の富を築いている。
自由都市ヴォランティスとアッシャイ間の往復には約二年かかるので、ヴォランティスからイ・ティ間の往復はそれよりもやや短いに違いない。クァースとイ・ティの主要湾岸都市であるインの間の距離はクァースと奴隷商人湾にあるアスタポア間の距離とおおよそ同じである(シーズン2と3の間にデナーリス・ターガリエンがたどった行程)。しかし、これは鴉が空を飛ぶような直線距離での話に過ぎない。インからクァースまでは船でまっすぐ進むことができるが、クァースとアスタポアの間には赤の荒地があるため通過することができず、アスタポアを目指すにはギスカル半島を回って西回りで航海しなければならない。したがって、クァースとイン間の行程はクァースからアスタポアまでデナーリスがたどった行程よりもおそらく短いだろう。
『氷と炎の大地』は2012年の秋に発売されたばかりであるが、テレビシリーズのシーズン2と3の間だった。テレビシリーズのために世界地図の草稿はシーズン2が始まったころにマーティンから渡されていたが、彼は東方地域の地理に関して何度か大幅な変更を加えている。視聴者ガイドの地図では、翡翠海はクァースのはるか北、ヴァエス・ドスラクやペントスと同じ緯度のあたりまで延びている。しかし、続いて発売された公式地図帳ではクァースは実際には翡翠海の最北端にあることが明らかになった。東に進むと海岸線は徐々に南に曲がっていき、まっすぐ北に延びているのではない。続編によれば、イ・ティの首都であるインはクァースのわずかに南、古代ヴァリリアとおおよそ同じ緯度にあることを示している。しかし、HBO視聴者ガイドは、続編のために発売された新しい公式地図が反映されていないどころか、シーズン3に進んでもシーズン2以来使用している以前の地図を単に使いまわしているのだ。それが故意によるもので、テレビの続編と小説の続編とでは世界地図は公式に異なるものであるのか、あるいは単純なミスであるのかははっきりしていない。したがって、テレビの続編におけるイ・ティが小説の続編におけるそれと同じ地理的位置にあるとは確信を持って言えないのである。